Red Echo / Re:Act|赤の残響と応答

古代の祈り、トライバルな伝承、革命を孕んだストリート、人はいつの時代も、表現というかたちで世界に応答してきた。
濱大二郎は、ヴィンテージの布や衣服を自らの手で解体・再構築し、そこに絵画を重ねることで、布に宿る記憶を呼び起こし、いまを映す像として表現する。 福井浩亮は、時代や土地を越えて蒐集した服飾やポスター、オブジェなどの断片を通して、忘れられた文化や思想の痕跡を、声を帯びたオブジェとして提示する。両者の表現は、「私たちは過去から何を受け取り、何を未来に手渡すのか」という問いへと交差する。

その交差点にあるのが「赤」。国家や革命、怒りや祈り、語られなかった記憶の象徴として複層的に響く色。本展において「赤」は、根源的なエネルギーとして現れる。それは、見えているものの背後にある「生きられた歴史」と、まだ形を持たない「これからの風景」とを接続するための触媒である。

古い布に描くこと、過去の物を手に取ること。それは単なる記録や装飾ではない。世界にもう一度「応答する」ための行為である。本展は、“視る”だけの場所ではない。“聴く”ための場である。語られることのなかった声、表現者たちのうちに響く”Echo(残響)”を私たちは聴き取り、また新たに“Re:Act(応答)”する存在となる。

ー 渡邊 賢太郎